運動をする際に重量ばかりを追い求めてはいませんか?
重量だけが負荷を決定する要素ではありません。
OKCとCKCと言う言葉をご存知でしょうか?
OKCの例では、座位での膝の伸展運動などの運動が起こる末端がフリーな状態です。
CKCの例では、スクワ ット運動が挙げられ、運動の末端が床などで制限された状態です。
これらを考えて、重量変化以外での運動のバリエーションや、より機能的な運動を考えてみましょう。
OKCとCKCとは
- OKC=Open Kinetic Chain:解放運動連鎖
- CKC=Closed Kinetic Chain:閉鎖運動連鎖
“kinetic chain”という言葉の起源は機械工学の 分野にある。機械工学における, “kinetic chain” は,ピンジョイントで結ばれた剛体のリンクモデル の動きを示すために用いられていた概念である。
引用:Rivera JE: Open versus closed kinetic chain rehabili tation of the lower extremity: A functional and biomechanical analysis. J Sport Rehabil 1994; 3: 154–167.
機械工学におけるOKCは、リンクモデ ルの末端が自由な状態であり、各ジョイントが自由に運動することができる状態と定義されています。
一方のCKCでは、リンクモデルにおける両側の末端の運動が抑止された状態と定義され、1つのジョイントの運動が他のジョイントへ影響を及ぼします。
現在では、この概念が人体で応用されています。
代表な例として、
- OKCでは座位での膝の伸展運動。運動が起こる末端がフリーな状態。
(※アームカール、レッグエクステンションなど) - CKCではスクワ ット運動が挙げられます。運動の末端が床などで制限された状態。(※腕立て伏せ、スクワットなど)
OKC、CKCの利点
CKCの利点として、主に床に接地して、自分の体重をコントロールする運動になるため、日常生活での身体の使い方に近い状況と言えます。
椅子に座って膝の曲げ伸ばしをするレッグエクステンションのような動作は実際の生活では滅多に使うことのない動きですからね。
また…
CKCトレーニングは固有感覚受容器を活性化して関節の安定性を向上させる。
例えば、バランスクッションに立位で乗っている状態の時、足関節の位置は常に早い動き、外乱刺激にさらされます。
この外乱刺激から姿勢を制御するために、地面に接地している足底や足関節だけではなく、連動して、膝、股関節といった関節にも自然と運動が起こります。このような状況を運動連鎖といい、また、固有感覚受容器(筋の長さや、足裏の圧を感知するセンサー)が活性化され、関節の安定性(バランス)が向上すると言われています。
上肢の例を挙げると、四つ這いで地面に手を付ければ、床→手→肘→肩と刺激が伝わってきます。これは機能障害を起こしている(動かし方を忘れてしまっている)五十肩などに有効な簡単なエクササイズになります。関節に圧刺激を加えフィードバックされる情報をより多くし、地面を押すという動作は前鋸筋や、僧帽筋への刺激にもなります。
しかし、上肢の場合は下肢と違い、日常的には末端がフリー(Open)の状態で使用されることが多いかと思います。
そこで、OKCの利点として、上肢ではより日常で使用する動作に近い運動であるとともに、アームカールのように単独の筋の収縮を狙いやすいといった点が注目されます。
(※アームカール:手にダンベルを持って肘を曲げる運動)
アームカールでも肘を台に固定すれば、肘から手にかけての筋が働き、上腕二頭筋の収縮により焦点を当てることが可能になります。
肘の固定がなく宙に浮いた状態で行えば、肩周囲の僧帽筋や、体幹、下肢にまで重量の刺激は派生していきます。
単独の筋の収縮を重視する場面は、主に機能障害を起こしている筋への直接刺激で動かし方を学習させたり、美容面ではボディメイクにしようされますね。
例えば、「肩幅は欲しい」と肩周囲のトレーニングをした場合、身体のシルエットに影響を与えるのは主に僧帽筋、三角筋といった表層の筋になります。
そして、この僧帽筋だけが発達しすぎると首が短く見え、なで肩のように見えてしまう場合もあり、僧帽筋の収縮を抑制して三角筋だけに収縮を入れる、ラテラルレイズなどが用いられることがあります。
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機能的な運動の選び方
上記で説明した利点をまとめると…
- 単独な筋を狙って収縮させたい場合はOKC
- 動作に近い運動を学習したい場合は、下肢ではCKC、上肢ではOKC
- 機能障害のある神経と筋の再教育ではCKC
- 自重を使ったお手軽なセルフトレーニングを作る際にはCKC
今回はOKCとCKCの2つで運動を分けてみましたが、全ての運動がこの2つに綺麗に分けられるかというとグレーな部分もあります。
例えば、ベンチプレスでは上肢は床には設置されていないのでCKCではないのは分かりますが、右手が動けば、左手も一緒に引っ張られて動きが連動します。
これは動きとしては腕立て伏せに近いですが、腕立て伏せは足と手が床に接地していて安定性を得ているのに対してベンチプレスでは上肢はフリーの状態ですが、両手で一つのバーを保持しているので、完全なフリーの状態でもありません。
これが、独立した2つのダンベルプレスであれば、OKCと言いきっても良い運動になるでしょう。
そして、一般的にダンベルプレスよりもベンチプレスの方が総重量は多く挙げることができます。
これはなぜでしょう・・・?
ベンチプレスの場合は両手でバーを握っているため、上肢の運動は制限されています。
つまり安定性が高い状態です。
対する、ダンベルプレスでは独立した2つのダンベルの自由度は肩関節の全可動域にわたり、広い範囲でグラグラと揺れ動きます。
運動の軌道が安定している方が当然、力は伝わりやすく、起動が不安定な状態では不安定のため、重量は上げられなくなります。
つまり、ウェイトトレーニングをやっている方で、重い重量を上げることにこだわっている方は多くいると思いますが、不安定な状態を作ったり、運動を行う可動域を広くしたり、運動の速度を早くすることでも全体の負荷は上がってきます。
重量を追い求めるよりは、目的を明確にして運動を組み立てたほうがより有意義な運動・トレーニングとなり、「最近、重量が伸びなくなった・・・」
というようなモチベーションの低下に悩むこともなくなるかと思います。
運動は何が一番良いというよりは、組み合わせて使うことが重要となります。
高重量のベンチプレスでは、主に神経系の発達を促しています。
回数の多い8~12回程度の運動は、より筋肥大に有効と言われています。
ダンベルプレスでは、ベンチプレスよりも軌道が不安定になり、体幹や多くの筋が運動に参加し、関節の位置、筋の長さなどのセンサーの役割をもつ感覚受容器からのフィードバックも増えるでしょう。
この変化は、CKCの腕立て伏せでもつけることができます。
腕たて伏せは通常、一度手を床についたら手は固定されています。
これを、手が動く状態を作り出せれば、軌道が不安定になり体重は変わっていないのに運動の負荷は上がります。
方法としては、両手にバランスクッションを敷いたり、懸垂バーからベルトをたらして手で把持して空中で姿勢を制御するといった腕立て伏せになります。
こちらは、マット体操や、柔道など床に手をつく場面の多いスポーツなどでより有効です。
もちろん、これらのスポーツ以外でもベンチプレスとは違った刺激、感覚受容器のフィードバックが変化しますのでトレーニングに取り入れることは有効と思われます。
運動は多くの筋の動員、神経や感覚受容器の動員を様々な角度から行うことで、パフォーマンスの向上や、筋肥大にも有効であると言われています。
ウェイトトレーニング経験者で、同じ運動ばかりをずっと行っていて、最初は重量が日に日に挙げられるようになっていったけれど、途中から行き詰ったという経験のあるかたもいるのではないでしょうか?
重量だけを追い求めるのではなく、こういったOKC、CKCのように固定されているのか、フリーな状態なのか、あるいは運動にいくつの関節が参加しているのか、負荷に自重が乗っているのか、ウェイトだけが負荷になっているのかでも刺激は変わってきます。
こうやって、考えてみると運動とは発想次第で無限に作り出すことができ、ルーティン作業ではなく、新しい発見、知的好奇心といった側面ももっているのではないかと考えています。
知的好奇心、「できなかったことができるようになった」というのはとても楽しく、幸福感を感じることのできると言われています。
ぜひ、目的や、目標をもった運動を心がけてみてください。
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