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プラシーボ効果の裏表|与える側、受け取る側、双方への効果とは

医療業界では薬の信頼性を高めるために”偽薬試験”が用いられ、医療以外でもこの考えは用いられています。

プラシーボ効果で得られる作用は、想い込みにより、良くも悪くも自覚症状に留まらず、客観的な効果をもたらす場合もあります。

しかし、そこには両者の、あるいは、商品への信頼度に大きく依存するというデータでは表しづらい要素も秘めています。

現代医療はどんどんマニュアル化され、AIが診察し薬を選んでくれるのもそう遠い未来ではないと言われています。

そんな中、今回は、マニュアル化、自動化が難しいとされている”運動療法”の分野に関する話も絡めてお話していきます。

プラシーボ効果とは

偽薬効果(ぎやくこうか)、プラシーボ効果(placebo effect)、プラセボ効果 とは、偽薬を処方しても、薬だと信じ込む事によって何らかの改善がみられることを言う。この改善は自覚症状に留まらず、客観的に測定可能な状態の改善として現われることもある。

医療業界、特に新薬の開発では”本物の薬”と、”偽物の薬”を各グループに与えて、”本物に薬”の効果が本当に発揮されて、症状の改善や副作用が起こったのかの信憑性を高めるために、このような試験が行われることがあります。

一般的なケースの例では、信頼関係の良好な医師から

『この薬は腰の痛みを和らげてくれますよ』

と出された薬の場合、たとえ薬物の効果が期待できないケースであったとしても、一定数の人からは『嘘のように楽になりました』『以前よりマシになりました』などの良好な返答が返ってきます。

この効果は主に自覚症状や、心理的な側面での影響力が大きく作用し、”誰から渡された薬か”ということも重要になっていると考えます。

例えば、反対に『うさんくさいな~この人…本当に効くのかな』のように、信頼関係が良好ではない医師から渡された薬であった場合では、逆に”症状が悪化するケース”も見受けられます。

このような望まない効果のケースをノーシーボ効果(nocebo effect)とも呼ばれます。

心理効果は医薬品以外にも使われる

このように、プラシーボ効果は心理的背景が強く影響するため、何も薬だけに作用するものではありません。

良く見られるのが”サプリメント”の類での効果ではないでしょうか。

『これを飲めば、悩める関節痛からも解放されますよ』

というように、ヒアルロン酸、コラーゲン配合などの誰でも知っているであろう成分を挙げ、実際の利用者の良くなった声を掲載するなどの売り方をしている商品も目にします。

ヒアルロン酸も、コラーゲンも口から摂取すれば、胃や小腸で消化分解されて関節にそのままの形で行き届くことはあり得ません。

しかし、このような商品の場合、症状の判定材料には”自覚症状”が使われています。

仮にサプリメントの効果が全くなかったとしても、千人、1万人と数多くの人を対象にすれば、数名からは『症状が良くなった』という回答が得られるでしょう。

その数名から得られた”良い回答や映像”だけを寄せ集めて抽出してあげることで、良く目にする広告やCMを作ることが可能です。

また別の例を挙げると、ダイエットサプリメントの中には、”下剤”成分を含んだものも存在します。

排泄・排尿により貯留物を空っぽにしたり、あるいは”脱水状態”にすることで体重は2㎏程度まで減少すると言われています。

一時的な体重減少があるため、それを良い作用と勘違いされている方もいますが、これは恒久的なものでないばかりか、過度な脱水を促し、健康を害する可能性すらを秘めています…。

消費者、治療を受ける方に知ってほしいこと

”症状が改善された”あるいは、”改善したという自覚症状”が得られる場合には3つのパターンが考えられます。

  • 本当に薬(治療)の効果が現れた
  • プラシーボ効果
  • 自然治癒

上記二つの他に、自然治癒、勝手に改善がみられる”という反応があります。

風邪や、怪我のケースがこれに当てはまりやすいですね。

例を挙げると、あなたは風邪をひいてしまい、病院で薬を処方してもらいました。薬のおかげで熱や、セキの症状は軽減し、薬を飲み続けて3日後に完治したとします。

これは、風邪が治ったこと自体は薬の影響でしょうか?

プラシーボ効果でしょうか?

仮に薬を一切に飲まなくても、風邪は3日後には完治していたかもしれませんよね。

怪我の例を挙げるなら、あなたは転んだ際に足首を捻挫してしまい、病院で湿布と痛み止めを処方してもらいました。2週間後には腫れも痛みもひいて回復しました。

これは、痛み止めや湿布の効果でしょうか?

これが自然治癒、勝手に回復するという働きになります。

しかし、薬や、湿布のおかげで治ったと思い込んで、『ありがとうございます!先生のおかげで良くなりました!』と言われる方も存在します。

『結果的に改善したんだから、なんだって良いじゃないか』と思われる方もいるかもしれませんが、ここには”落とし穴”が存在します。

例えば、あなたが仕事中に重い荷物を持とうとして腰を痛めてしまい、病院へ駆けつけましたが、画像検査では異常がないと言われたので、リハビリ(または接骨院等)に通うことにしたとします。

腰に低周波(電気)を当てたり、マッサージやストレッチを行い、2週間後には回復が見られました。

あなたはきっと『ありがとうございます!先生のおかげで良くなりました!』と感謝をするはずです。

しかし…、この件についても、プラシーボ効果と自然治癒が関わってきます。

仮に放っておいても、2週間後には回復していたかもしれません。

もしかしたら、何もしない方が早く回復していたかもしれません。

このように3つのパターンを考慮して、治療を受けたり、商品を選ばないと、

無駄な薬を飲み続けたり、治療にかかるお金と時間を無駄にすることだってあり得るのです。

運動療法はマニュアル化されにくい

ストレッチや、マッサージ、エクササイズなどの運動を治療に用いること全般を運動療法と呼びます。

この運動療法は医学界での扱いは薬と同じで、効果の判断基準も薬や他の治療と同じ評価基準で審査されます。

薬であれば、本物の薬と、偽薬で効果判定を行い、本物の薬だけに確かな効果が得られれば、高い信頼性が生まれるでしょう。

しかし、運動療法では”偽薬”を使った試験が難しいとされています。

薬の場合には本物と同じ形のものが簡単に用意でき、対象者も本物か偽物かの判断は不可能でしょう。

ですが、運動の場合では、してもらう運動にしろ、自身で行う運動にしろ、運動療法を受けた対象者は何をされたか、何をしたか判断できてしまいます。

無理やり行うなら麻酔をかけて、目隠しをして…現実的ではありませんよね…。

つまり、リハビリ、接骨院、整体院で行われる全般に行われる運動療法は、効果判定がとても難しいのです。

それはすなわち、この疾患にはこの治療、この症状にはこの治療というような”マニュアル化(標準化)”がなかなか困難な分野になっています。

例えば、治療方法が明らかに間違っているセラピスト(トレーナー)が居て、それを『間違っているから、こっちの方法に変えた方が良いよ』と指摘しても、長年同じ方法で行っている人は、方法を変えようとしないケースが多くみられます。

なぜなら、”プラシーボ効果””自然治癒”から得られた改善効果を自分の手柄だと思い込んでいるからです…。

セラピスト(トレーナー)だけでなく、医師にも言えることですが、この2つからなる思い込みは、薄っぺらいプライドを肥やすには十分すぎる力を持っているのです。

まとめ

プラシーボ効果とは悪い面にも働いてしまいますが、それを理解した上で良い側面でも用いることができます。

例え思い込みであっても症状が改善する…つまり

”ヒト一人が幸せになれる”ということではないでしょうか。

これは、薬を処方する医師や、運動療法を行うセラピスト(トレーナー)が、患者や利用者との信頼関係を築けて初めて起こる現象です。

信用のない人からもらった薬では、もしかしたら治るものも治らなくなってしまうかもしれませんね(笑)

悪い面と良い面を知った上で付き合っていくのが重要かもしれません。


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