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【ROM制限】身体が硬くなるのはなぜ?

カラダが硬い…

運動やスポーツ活動をされている方には特に深刻な悩みである場合もあります。

スポーツに留まらず、重度のカラダの硬さは、姿勢や、動作がかっこ悪くなったり、腰痛や、肩こり、怪我を招きやすいなどといった弊害を引き起こし、とても笑って誤魔化せるような状態ではなくなってしまいます。

今回は、なぜ身体が硬くなるのか、予測されるリスクと共にメカニズムを考えていきます。

ROM制限

身体の各関節が何処まで動くかを”関節可動域”と言います。業界用語では、ROM:Range of motionROM=関節可動域と呼ばれるのが一般的です。

そして、身体が硬い…つまりは、なんらかの原因で関節可動域に制限がある場合をROM制限と言います。

ROM制限は一般的に言われている”筋肉”の制限だけとは限らず、様々な原因で出現します。

つまり、筋肉のストレッチをずっと行っていてもなかなかROMが改善されない方は、筋以外の原因で制限が出ている場合も考えられます。

ROM制限に関わる因子は主に関節周囲の柔らかい軟部組織が主に影響を与えています。

骨格筋、関節包、皮膚は後述する、ROM制限が重度化した”関節拘縮(かんせつこうしゅく)”と呼ばれる状態についての主な原因因子になってきます。

健康な方で、一般の生活を送っている場合にはまず”関節拘縮”と呼ばれるまで重度化するケースは稀です。

一般的に身体が硬くて悩んでいると言われる場合、まず頭に思い浮かぶのは筋肉なのですが、それ以外も考えてみましょう。

ROMに関わる制限因子

  • 骨格筋:心臓以外の筋肉
  • 関節包:関節を包み保護し、スムーズに動くよう中には潤滑液がある
  • 皮膚
  • 神経
  • その他:脱臼や、骨の形態異常(変形)、関節の位置異常、関節内遊離体

ROMを制限となる組織は、正常ならば筋肉あるいは骨性のストップがあり、それらは各関節によって異なります。

例えば、膝を屈曲(曲げる)した際には、ふくらはぎと太ももの筋肉や脂肪といった軟部組織どうしが接触して関節が止まります。これは肉付きの良い人が正座ができない理由でもあり、過度に肥大した筋肉がある場合は正座は難しくなるかもしれません。

この最終可動域でのストップ因子を、感覚で表現することを業界用語で”end feel(エンドフィール)”や、最終域感といわれています。

竹井 仁:関節可動域治療のアウトカムp379, 理学療法学 第34巻 第8号

上で挙げた正座の例の場合は軟部組織の接近の”Soft”と表現することができます。

膝を伸ばしきった際の骨性の制限であれば弾力性のない硬い停止感の”Hard”と表現することができます。

そして、膝を曲げた際に、大腿四頭筋の短縮での制限があった場合は、筋の伸張性の制限でストップします。この、筋性の制限の場合ではストレッチが有効となります。

しかし、膝を曲げた際に現れる制限は筋だけとは限りません。

1番のリスクとして考慮しなければならないのが、”神経”性の制限になります。

神経性の制限、トラブルがある状態では例え安全性の高いストレッチと言えど、悪化要因となってしまいます。

大腿神経伸長テスト

上の図は右ふとももの前面を通る大腿神経の制限がないかのテストになります。

方法としては

  • まず土台となる椅子やベッドを用意する
  • テストしたい側の右膝を土台に乗せる
  • 背中を丸くする(頚椎・胸椎・腰椎屈曲)
  • 右膝を最大まで屈曲、この時右足首を自身の手で持つ
  • 足関節を底屈(つま立て)の方向

ここまでの状態がスタートポジションであり、頭のてっぺんから足先にかけた神経を最大まで引き延ばした状態です。

※仮に神経性のトラブルがある方は痛みや違和感を伴う場合があるので、無理にこの姿勢をとろうとしないでください。

ここから、図の①のように頚椎伸展(頭だけ起こす)します。

この動きにより違和感や、痛みが軽減される、あるいは、足関節を底屈(つま立て)できる場合は”陰性”、つまり正常になります。

次に再度、スタートポジションに戻り、今度は図の②のように、足関節を背屈(つま立ての逆)します。

この動きにより違和感や、痛みが権限される、あるいは、頚椎を更に屈曲(頭を下げる)できる場合は”陰性”、つまり正常となります。

これら①と②の動作を順番に行っても違和感や痛みが軽減されず、可動域(①の場合は足関節の底屈、②の場合は頚椎屈曲)にも変化がなかった場合は”陽性”となります。

陽性の場合は大腿四頭筋のストレッチを積極的に行っても筋肉ではなく神経を無理やり引き伸ばしてしまう可能性が高くリスキーだと言えます。

また、太ももやスネがしびれる、足の力が入りにくい、腰が痛いなどの症状が、テスト以外での出現している場合は詳しい精密検査も必要になります。

大腿四頭筋、主には大腿直筋のリスクの少ないストレッチ方法としては、

  1. ストレッチしたい側(右側とする)の足を後ろにして、片膝立ちになる
  2. 右の股関節を最大まで伸展(反らせる)する
  3. 右の足首を右手でつかみ屈曲させる(曲げる)
  4. 届かない場合はタオルを足首に巻いてタオルの延長上を手で持って引っ張る
  5. ※この時の右足関節は背屈(つま立ての逆)
  6. ※上半身と頭は起こし決して丸くならないようにする

※このストレッチを上半身を丸めたり、足先を持って行ってしまうと、先ほどの神経伸長テストと同じポジションになってしまい、筋肉ではなく神経を引き延ばしていることになります。

また、筋肉や正常な骨性以外のend feel、すなわち、ROM制限の場合は、大抵痛みを伴います。

リスクを軽減する上で、このことに配慮して、ストレッチやエクササイズを行う必要があります。

また、関節包の制限がある場合は同時に、筋や、神経も制限されているケースが一般的に多いです。

ストレッチに関する考え方の記事も参考にしてみてください。

関節拘縮とは

関節拘縮とは皮膚、骨格筋、関節包、靱帯などの関節周囲の軟部組織が器質的に変化することで、柔軟性や伸張性が低下してしまうことから生じるROM制限のことを言います。

つまり、ROM制限を放っておいたり、骨折後の固定などで全く動かないこと等から重症化して、病的な症状にまでなってしまった状態と言えます。

五十肩、四十肩といった、肩関節周囲炎もこれが原因となります。

拘縮の原因と進行

”ラットの実験”では下肢を不動化する(動かなくする)と2~4週後までは、骨格筋が拘縮の主な原因になるとされています。つまり、骨格筋の拘縮とは、筋の長さが短くなり、伸び縮みしにくくなり、弾力性がなくなり、硬くなった状態です。

それ以上の不動期間になると、関節包が拘縮の主な原因になるとされています。

また、上記のROM制限の約1割は皮膚の変化に由来することも明らかになっています。

一方で、靱帯に関しては、不動により力学的に脆弱になることから、原因としての関与は薄いとされています。どちらかと言えば、断裂したり、損傷しやすくなり、二次的に関節の位置関係が変化してしまった場合に制限が起きるというイメージでしょうか。

なぜ不動が続くと拘縮(制限)が進行するのか?

前 述したラット足関節尖足拘縮モデルのヒラメ筋においては不動 1 週で無処置の対照群より有意な筋長の短縮が認められるもの の,その後は不動期間を延長しても有意な変化は認められてい ない13)(図2a)。つまり,骨格筋の短縮は拘縮発生の誘因になっ ている可能性はあるものの,その進行とは関連がないといえ る。

一方,不動に伴 う皮膚や関節包の伸張性低下に関しては,これまで明確なデー タは示されていないが,その構造特性などから考えると骨格筋 と同様の変化を呈すると推察される。

正常な皮膚組織は表皮、真皮、皮下組織からできています。真皮ではコラーゲンが非常に密なのに対し、皮下組織は”脂肪細胞”を多く含み、その間隙に”コラーゲン”が存在します。しかし、不動により皮下組織の”脂肪細胞”が萎縮・消失し、その間隙を埋めるように”コラーゲン”が増生されます。これは、不動期間の延長に伴って症状が進行する傾向があります。

つまり、皮膚性拘縮の病態には皮下組織における線維化の発生・ 進行が関与することが示唆されています。

同様に、筋と関節にも反応が起こります。

骨格筋では、筋周膜ならびに個々の筋線維を直接包む筋内膜といった筋膜にコラーゲンが存在し、このコラーゲンが増生し肥厚していきます。

関節では、滑膜に”脂肪細胞”が存在し、”コラーゲン”はその間隙に認められる程度で、関節包の中でも伸張性に富んでいる部位です。しかし、滑膜における脂肪細胞の萎縮・消失が認められ、その間隙を埋めるように”コラーゲン”の増生され、線維化が発生し、加えて”コラーゲン”の高密度化も起こるとされています。

また、最近の先行研究では組織が”低酸素状態”になることで線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化が促されると報告されており、このこともコラーゲン生成に関与し、線維化を促進する要因と考えられています。

※各組織に存在するはずの”動きに富んだ脂肪組織”が消失して、”動きの乏しいコラーゲン”が増えてしまうことが原因で線維化して、拘縮が起こる。
※骨格筋のコラーゲンの過剰生成には組織が低酸素状態になることも関与する。
※不動の延長で症状はどんどん進行する傾向がある。
美容分野でモテはやされているコラーゲンは肌の”ハリ”に関与していると言われていますが、つまり・・・
  • コラーゲン=動きが悪い組織=たるまない
  • 脂肪細胞 =動きが良い組織=たるむ
ということでしょうか・・・。
でも、いくらたるむのが嫌でもコラーゲン繊維ばかりだと表情がお人形のように硬くなるかもしれませんね(笑)

拘縮へのアプローチ

このことから、拘縮状態に治療を行う場合には”コラーゲン”に対するアプローチ手段を考える必要があります。

先行研究で拘縮の予防・改善効果のエビデンスが示されている運動療法でも頻回な治療継続が必要となり、即時に改善できる手段は今の現段階では存在しません。

不動に伴う骨格筋の線維化には”低酸素状態”が関与しており、例えギプス固定中であっても骨格筋の低酸素状態を緩和することができれば、筋性拘縮の発生を軽減できる可能性があります。

固定中で動かせない筋に対して10Hzの低周波を用いることで線維化の抑制効果が得られたという報告もあります。

どちらにせよ、重篤な拘縮の改善は困難であるため、固定期間を短く抑えたり、不動を作らないことが重要になってきます。

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