ギックリっ!!
そんな、突如として訪れる腰痛を経験したことのある方は少なくないはずです。
何気ない日常生活を送っていてもそれはやってくるかもしれません。
しかし、「そもそも”ぎっくり腰”ってどういう状態?」
「再発を繰り返すのはなぜだろう?」
「なってしまった時の対処は?」
「予防法はあるの?」
今回は、そんな疑問にお答えします。
エクササイズ紹介もあるのでぜひ参考にしてみてください。
ぎっくり腰とは
ぎっくり腰とは、疾患を指す正式名称ではなく、突如として発生した急性腰痛の俗称と言えます。欧米ではその痛みと病態から”魔女の一撃(Hexenschuss)”比喩されて呼ばれているようです。
発生要因は様々で重い荷物をもったり、朝布団から起き上がろうとした際や、急に身体を動かした時、運動中に発生しやすいとされています。
広い意味ではぎっくり腰=急性腰痛を指すようですが、ここでは、ヘルニアや、脊柱管狭窄症などの画像所見がなく、とあるきっかけを境に腰に痛みを訴えた症状全般、つまり、診断名の付かない急性腰痛について考えていこうと思います。
症状は主に運動時の痛みであり、安楽姿勢と痛くなる姿勢があります。
安静時でも痛みがあり、姿勢によって痛みに変化がまったくない場合には、内部疾患の疑いがあります。
痛みの原因組織
椎間板が原因の場合は画像での所見がみつかり、神経を直接痛めるというケースも稀なのでここでは除外します。
- 筋
- 椎間関節
- 靭帯
考えられるのは、上記の3つです。
筋
筋肉が傷みの発生原因の場合は、筋を伸ばした時、筋に力を入れた時に、あるいは筋を直接圧迫などで刺激した場合に痛みが生じます。
仮に腰を丸めている方が楽な場合は、筋は痛みの原因ではないでしょう。腰を丸めた体幹屈曲位では背部の筋はストレッチされている状態になるため、除外することができます。
椎間関節
背骨の一つ一つである椎骨(ついこつ)の上と下が関節している部分を椎間関節(ついかんかんせつ)といいます。
椎間関節が痛みの原因である場合は、この関節の面どうしがぶつかる際に痛みが生じます。
腰を丸めるように腰椎を屈曲すると、関節面どうしは離れる方向に動くため、痛みが軽快します。
腰を反らすように腰椎を伸展すると、関節面どうしは接近するため、痛みが強く出現します。
身体を右に倒した時は右側の関節が接近し、右側で痛みが出ます。
つまり、右側に身体を倒すように側屈した場合は椎間関節の原因ではないということになります。
靭帯
靭帯とは骨と骨を繋いだものですが、筋のように任意に収縮する作用はありませんし、伸縮性も極わずかで、主に関節の安定性に関与しています。つまり、伸びてはいけない組織ですね。
この靭帯が傷みの原因の場合、引き延ばされダメージを負った状態、いわゆる捻挫(ねんざ)ですね。過去に引き延ばされ、長さが伸びてしまっていたり、負荷がかからずに脆弱化している場合、この捻挫を繰り返しやすくなってしまいます。
この靭帯の中でも痛めやすいのが、骨盤と腰椎4・5番を繋ぐ腸腰靭帯です。
この靭帯が炎症を起こしている場合、触ったり、引き延ばした再に痛みがでます。
仮に右の靭帯を痛めている場合は、身体を左に倒すように側屈すると、右の靭帯が伸ばされ痛みがでます。
反対に右に倒すように側屈すると、症状が楽になるかもしれません。
この場合の、筋との鑑別は右の骨盤を持ち上げるように力を入れてみます。筋は収縮でも痛みがでますが、起こる動きは右側屈になるので、腸腰靭帯では痛みがでません。
腰ではなく、仙骨と腸骨をつなぐ仙腸関節という関節があります。
ここを制御する仙腸靭帯にも痛みが出る場合があります。
厳密には腰ではないですが、一般的に「腰が痛い」という訴えを持った方に痛みの部位を指さししてもらうと、胸椎・腰椎・仙腸関節までを指さすことがあります。
この仙腸関節の動きは極わずかで、正常可動域は2°程度と言われています。かなり、強度のある靭帯で覆われており、動いているのかほとんどわからない程度です(-_-;)
なので、この関節でのトラブルがみつかることは、特に男性の場合は稀です。
階段から落ちたり、スポーツで激しい衝撃を受けたりが主な発生原因となります。
女性の場合には出産後や、生理中に靭帯が緩んで痛みを生じる場合があります。多くは、女性特有の症状となります。
一時期、この仙腸関節をグイグイ動かせば腰痛が治りますという治療法がTVで取り上げられ、日本で流行していました。
もし、産後や、生理での女性ホルモンで靭帯が緩んでいて痛みが出ている場合は、動きを大きくするようにグイグイ動かしてしまえば悪化要因になるでしょう。
鑑別は触ってみる。四の字固めのように股関節を開くと痛みが強くなるかもしれません。痛い側の足で片足立ちをすると痛みが強くなるかもしれません。
この仙腸靭帯が傷みの原因の場合、骨盤ベルトで一時的に固定してあげると症状が軽快する場合があります。
対処と回復の傾向
炎症による、ぎっくり腰は通常3日~2週間程度、遅くとも6週で症状はだいぶ落ち着くはずです。
痛みが出た直後で、炎症がある場合はアイシングが有効になります。氷か、保冷剤をタオルなどで包んで、患部を15分程度を目安に冷やしてあげてください。
特に受傷後48時間は大きな効果が期待できるので、できるだけ早く、積極的に行いましょう。
患部に熱感がある間は入浴は控えるか、シャワーの後にアイシングをします。
3日以上の過度の安静は返って、筋力低下、組織の脆弱化を招いてしまうので、動ける範囲で徐々に元の生活に戻せるように心がけましょう。
アイシングや湿布に関する記事も参考にしてください。
予防
そもそもどうして、ぎっくり腰になってしまったのか?
「治って良かった♪」
で済ませずに、再発しないように予防の策を立てておかなければ、同じ苦しみを繰り返すこととなるでしょう。
受傷に関わる要因
- 関節の不安定性
- 筋力低下
- 靭帯の脆弱化、延長
- 柔軟性の低下
- 日常生活での身体の使い方
ザックリと以上のことが挙げられます。
腰椎はもともと大きな可動域を作り出す構造はしていません。特に下位腰椎ではスタビリティ=安定性が重要とされています。
そして、その安定性が失われた時に痛みを生じやすくなってしまいます。
靭帯のトラブルで関節が不安定な状態になり、筋力低下も合わされば、制御するものがなくなります。
それに加えて、グラグラの関節と、動きの悪い関節が混在している場合、症状は更に悪くなると言えます。
腰痛の大半(8~9割)は腰椎の下二つの関節(L4/5、L5/S1)で起こるとも言われています。
特には”L5/S1=第5腰椎と第1仙椎”がルーズになりやすいです。
良く動きすぎる不安定な関節があると、動作を行う上ではその関節が良く動かされることになります。
そして、動き過ぎる不安定な関節の周囲には、反対に動きが悪く硬くなった関節が見つかることが多いです。
先ほど挙げた要因の”柔軟性”がここで求められます。
上位の腰椎や胸椎、股関節は特に動きが硬くなりやすい関節です。
すなわち、硬い部分を改善し、不安定な下位腰椎を安定させるために筋力を強化する必要があります。
この件に関連した記事も参考にしてください。
エクササイズ
動きの硬い部分には【柔軟性】を、動き過ぎて不安定な部分に【安定性】を持たせることが目的となっています。
- 【柔軟性】上位腰椎・胸椎・胸郭の可動域拡大
- 【柔軟性】股関節周囲筋(大腿直筋、大腰筋、ハムストリングス)のストレッチ
- 【安定性】スタビリティエクササイズ
上位腰椎・胸椎・胸郭の可動域拡大
まずは硬くなった胸椎の可動域を確保する運動です。背もたれの位置を調整すれば上位腰椎にも使用できます。
この方法では肋骨を含めた胸郭の動きの改善も兼ねています。
- 背もたれ付きの椅子に座る
- 左側をストレッチする場合、左手を頭の後ろに回す
- 腰椎はなるべく動かさない。アゴは引いておく。
- 息を吸い込みながら、胸椎を右側屈、左回旋、伸展させる
- この時、背もたれに胸椎と肋骨を押し付けて、背もたれの上端を支点にするように行う
- 息を吐きながら元のまっすぐなニュートラルの姿勢に戻す
- ④~⑥を繰り返す
椅子の背もたれの上端が支点になるため、上の方の胸椎、肋骨を動かしたい場合は、お尻を前に出すと、背もたれ上端が上に上がってきます。
胸の前などにある上の方に位置する肋骨を下に押し下げることも有効となります。
大腿直筋のストレッチ
大腿直筋は大腿四頭筋を構成する4筋の内の一つで、その他の3つの筋とは異なり、股関節と膝関節の2つをまたぐ二関節筋です。
短縮してしまうと、骨盤が前傾して下位腰椎の過度な前弯を招きます。
ストレッチ姿位は股関節伸展、膝関節屈曲です。
右の筋のストレッチをする場合の説明します。
- 右の膝小僧を床についた片方膝立ち位になる
- 右手で右の足首を握り、手を使って膝を曲げていく
- 手が届かない場合はタオルを使う
- この時膝を曲げようとすると「足がつりやすいので注意」
- おへそを突き出すように右の股関節を伸展させる
- 握った手を離さなければ自然に膝も屈曲位がキープされる
大腰筋のストレッチ
こちらは、短縮してしまうと、骨盤の前傾、腰椎の過度な前弯、股関節屈曲、外旋を招きます。
ストレッチ姿位は股関節伸展、内旋、体幹の体側の側屈です。
右の筋のストレッチをストレッチする場合を説明します。
- 右の膝小僧を床につけて片膝立ち位になる
- 右の足首が外へ開くように、右股関節を内旋する
- おへそを突き出すように右の股関節を伸展させる
- 体幹を左に倒すように側屈させる
ハムストリングスのストレッチ
内側の半腱様筋、半膜様筋と、外側の大腿二頭筋を総称してハムストリングスとよびます。
大腿二頭筋の下には末梢神経が通っているので、硬くなると神経症状が現れる場合もあります。
膝の安定性にも関与している筋のため、膝に痛みや不安定性、怪我をしたことがある方は慎重に行いましょう。
ストレッチ姿位は股関節屈曲、膝関節伸展です。
左の筋のストレッチをストレッチする場合を説明します。
- 右の膝小僧を床につけて片膝立ち位になる
- 左の膝を止まる所まで、伸ばすように伸展する
- 腰を丸めないように、胸を張って股関節でお辞儀するように屈曲する
- 膝は軽度の屈曲位を保ち、完全伸展しない(伸ばしきらない)
スタビリティエクササイズ(モーターコントロール)
不安定な腰椎を動かさないように、腰の動きを制御しながら、手足を動かして、身体に複数の筋を同時に使う方法を学習させます。
止まっている簡単な運動から初めて、手足を動かすといった刺激を加えていきます。床に設置している面積を小さくしたり、バランスクッションを使ってもより難しく、高度な運動にすることができます。
できるようになってきたら、簡単なものから徐々に難しいものにレベルアップしていきます。
今回はオーソドックスなプランクと、その派生の運動でやってみましょう。
- プランプ
- サイドプランク
プランク
サイドプランク
生活動作を改める
どんなにトレーニングを行っていても、生活や仕事、スポーツ中の動作や、姿勢が悪ければ、腰へのメカニカルストレスとなり、再発を招く危険性が高まります。
特に重い荷物を持ち上げたり、前かがみの姿勢では腰を動かさないように筋収縮で制御する必要があります。
腰はなるべく動かさないように腹筋に力を入れて、股関節、膝をふんだんに使って動作を行うように心がけましょう。
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