姿勢

加齢で身長が縮むわけ、伸長を伸ばすには

「あれ?○○さんってこんなに身長低かったっけ?」

久しぶりにあった友人や、家族からの一言で密かにショックを受けたことのある方もいるではないでしょうか?

 

中年以降で身長が徐々に低くなるというのは一般的な解釈ですが、なぜ低くなるのかを知っていますか?

身長が縮んでしまう原因を知っていれば、予防の対策をとることができ、それは言い換えるならば、身長を伸ばす方法とも近い考え方とも言えます。

”身長”は姿勢、や筋のバランスによって見え方が大きく変わります。加えて、身長は数字よりも、あくまで見え方の影響力が大いに関係していると、個人的に重要視しています。

肉体が引き締まっていれば、仮に同じ身長であったとしても、かっこよく、キレイに見えますよね。

つまり、数字を気にしてコンプレックスにされている方もいるかと思いますが、できること、変化を加えられる要素で努力した方が幸せになれるはずです。

今回はそんな、”誰もが気にする身長”について、多角的な視点から考えていきたいと思います。

身長が縮む原因

身長が縮む、低く見えてしまう原因は主に3つあります。

  • 下肢の変形
  • 加齢による椎間板の退行性変化
  • 姿勢による影響

下肢の変形の、O脚変形については別記事を参照してください。

加齢による椎間板の退行性変化

年齢を重ねての身体の構造の変化として、身体の水分量が低下します。

成人の体内水分量は60%程度ですが、高齢者では50%といわれています。

この水分低下は背骨の間に位置している”椎間版”にも影響を及ぼし、身長低下に関与しています。

椎骨(背骨)は頚椎7こ、胸椎12こ、腰椎5このうち、頚椎であるC0/1とC1/2は椎間板を持たないので全部で23個の椎間板を持つことになります。

仮にこの椎間板が1個に付き1㎜縮んでしまったとしたら、身長は2.3㎝低くなることになります。1個に付き2㎜だとしたら、4.6㎝低くなることになりますね。

そして、ただ低くなるだけに留まらず、機能も制限されてしまいます。

上の図の青い部分の靭帯は骨の安定化を担うために、通常は「ピーン」と張った状態です。

例えるなら、テントを立位を維持するワイヤーの役目を担っています。

これが椎間板が薄くなってしまい、ワイヤーのテンションが緩んでしまうと不安定な状態になってしまいます。

椎間板が薄くなることで、”椎間関節”の間は狭く、関節どうしが接近してきてしまい、本来、は靭帯で制御されていた動きが、骨どうしの衝突で制御されるようになります。

この不安定な状態を安定化させるために骨が変形して”骨棘”を形成します。

関節面を変形させて、接地面積を拡大して安定化を図るように働きます。

もし、この骨棘によって神経が触れるようになれば、痺れや筋力低下を引き起こす可能性もあります。

しかし、この骨棘は関節の不安定性を改善し、身体を支えるために”手を広げるように”形成された現象です。手術によってこの骨棘を切除したとしても、関節の不安定性は悪化してしまうことでしょう。つまり、切除したところで、再形成されてしまい、手術での改善は難しいとされています。

ここで靭帯の機能を補う働きを持つのが筋肉になります。

つまり、加齢により椎間板が薄くなり、さらに筋力低下を合わせもった場合に、各種の痛みや神経症状が現れ、それは姿勢にも大きな変化を与え、”見た目の身長”は著しく低く見えてしまうでしょう。

姿勢による影響

加齢による水分低下、椎間板の変性に抗うことはなかなか難しい問題です。

しかし、先にも述べたように重要なのは見え方であり、放っておけば、機能が低下するであろう椎間板や靭帯の仕事をフォローするできるのは…、老化に打ち勝つ変化をもたらせるのは”筋肉”ということになります。

そして、例えば猫背などの不良姿勢では、本来骨にかかる重力の運動ベクトルが変化してしまいます。

骨という組織は主に骨の長軸方向の力を受けるための構造になっており、その運動ベクトルが変化してしまうと、耐久性は脆弱になってしまいます。

 

例えるなら、車は前方からの衝突には強く、ドライバーは守られる設計がされていますが、側方からの衝突には弱く、それが制限速度であったとしてもドライバーの身の安全は保障されていません

加えて身体の組織というのは、刺激を受けて強くなる、あるいは強度が保たれるという性質をもっています。

この場合、骨の長軸方向への重力負荷により、骨の強さが確保されます。これが不良姿勢によって崩れた場合、骨粗鬆症や、圧迫骨折、骨の変形といったリスクも増加することになるでしょう。

特に高齢者で、重度化した真ん丸な背中(円背)のケースでは、身長が低く見えるだけではなく、内臓が圧迫され、逆流性食道炎や、頚椎症、顎関節症、便秘、骨折、神経症状といった弊害を招きます。

つまり、整形外科疾患だけでなく、内科疾患の入り口は姿勢や運動器の不具合である可能性が非常に高いと考えられます。

身長を伸ばすには?

ここまでは身長が縮む原因、不良姿勢が低身長以外にもさまざまな弊害のリスクになることをお話しました。

そして、縮む原因を知っていれば、伸ばすために何をすれば良いのかもおのずと浮かび上がってきます。

身長を伸ばす上で”栄養や睡眠”といった内容は重要な要素でありますが、ここでは”組織の発達と姿勢”についてフォーカスをあてていきたいと思います。

  • 骨の長軸方向に刺激を加える
  • 軟部組織の柔軟性を保つ

骨の長軸方向に刺激を加える

骨の成長には”骨端線”と呼ばれる軟骨が必要であり、この軟骨が硬い骨へと徐々に変化していき骨が伸びていきます。つまり、骨の成長の伸びしろと言えるでしょう。画像検査で軟骨は透けて見えるので有無の判断は容易に可能です。

これは通常、二十歳前後に消失すると言われています。この骨端線がある期間にどれだけ、十分な栄養をとれたか、刺激をいれられたかが重要になってきます。

上の図で示した赤線が長軸となります。この方向と平行に重力や、荷重としった刺激を加えることで骨の発達、や骨折後の治癒の促進にもなると言われています。なので、骨頭(上の関節部分)は重力ベクトルと方向が違うので骨折後の治癒が難しいと言われいます。

そして、骨と骨を結んでいる張力も刺激になるでしょう。

つまり、走ったり、ジャンプすることで自重よりも大きな荷重エネルギーを骨に与え、運動による筋活動も骨への発達刺激となるので、成長期では走り回るスポーツや運動活動が身長を伸ばすには適していると言えるかもしれません。

猫背になってしまえば荷重ベクトルが長軸とは別の方向を向いてしまうので背筋を伸ばすような運動活動が向いていると言えるでしょう。

適切な方向に荷重がかかるように、効率のよいフォームの習得がそのまま身長を伸ばせる秘訣になりそうですね。

また、常につま立てで生活している民族では、中足骨が過度に発達(長い)していたというのを聞いたことがあります。

これは犬や猫などの四つ足動物と同じ荷重ベクトルになることで過度な発達がみられたのかもしれません。

うちのワンコに協力してもらいました(笑)

中足骨が長いのがわかりますね。

ルナちゃん
机の上に立たされて怖かったんだけど!(涙)
引用:peppynet.com

軟部組織の柔軟性

骨の成長に合わせて、通常では筋肉や神経、軟部組織も一緒に長くなっていきます。その骨の急激に成長に筋の長さがついてこれない場合に成長痛といったように、筋の付着部に痛みをきたす場合があります。

すなわち、身長を伸ばすには筋肉を柔軟に保つことが重要であり、”腰椎分離症”はこの骨成長に筋の長さがついていけなかったことが原因で骨の分離がおきたのではないかと言われています。

このようなことから、成長期に過度な筋トレをするなと言われるようになったと考えられます。

正確には筋トレがダメなのではなく、バランスの悪い筋力強化、柔軟性の欠如が問題であると考えられます。

筋力強化を行いたい場合は、動筋と拮抗筋をバランスよく鍛える必要があります。柔軟性を意識して、広い可動域で運動を行う必要があるでしょう。

例えば、上腕二頭筋を鍛えたい場合は、拮抗筋(裏側)である上腕三頭筋も一緒に鍛える必要があります。大腿四頭筋を鍛える場合は、ハムストリングスも同時に鍛える必要があります。

危険とされているのは、筋の張力のバランスが崩れ、姿勢が崩れてしまうことで逆に成長を阻害してしまうということです。

また、子供の場合、骨端線、つまり、なんこつ部分が大人より多く、耐久性は低いと言えます。疲労骨折なども日本の少年野球やサッカーチームでは頻繁に起きているそうです。海外では少年野球の投球制限などが設けられ、子供たちを守るルールが出来上がってきています。

過度な疲労をかけないように、動筋、拮抗筋のバランスを崩さないように姿勢を見ながら行い、柔軟性を損なわないように広い可動域で運動を行う。
こんな責任はなかなか持てないから「子供は筋トレをするな」が一般的になっていますね。
このようなリスクもあるので、ストレッチや、自重を使った運動をメインに行うのが適しているかもしれません。
動筋・拮抗筋についてや、姿勢に関する情報は別の記事にも記載されていますので参考にしてください。

生物の本能

この項は個人的な意見よりになってしまいます。

実行頻度の多い運動に加えて、新たな能力が必要になった、つまり進化ですね。

背の高い木の葉を食べるためにキリンは首が長く進化しました。

ヒトは道具を使うために、二足歩行になり、猿とは違い親指での対立運動(つまみ動作)を獲得しました。より高い知力を身につけるために大きな頭、脳を手に入れました。

このように、生活の中で身長や手足の長さが必要で、「なくてはならない」という刺激を与えてあげることでも成長を促せるのかもしれません。

例えば、バスケやバレーなどのジャンプスポーツで身長が伸びるというのは昔から言われています。

「もう少し手が長ければ…」

「足が長く高く飛べたら…」

これは単にジャンプでの荷重刺激や、手や身体を伸ばすといった伸長刺激以外にも、進化の過程を見てみると、欲求や”本能”も関係しているのかもしれないですね。


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